ダンスと音楽のバトル

アイドルマスター「i-rony」SOIL&“PIMP”SESSIONS‐ニコニコ動画(ββ)
アイドルマスター「i-rony」SOIL&“PIMP”SESSIONS‐ニコニコ動画(ββ)
Do-Daiのダンスは使いにくい」
という発言を、何度か目にしたことがある。Do-Daiのダンスには、明確な意味を持つ動作がたくさんある。電話をかける、頭をなでる、眠る、これらの動作は、曲の持つ意味と衝突しやすい。歌詞がある曲だと、決定的だ。
明確な意味を持たない動作でも、イカダンスを筆頭に、強い特徴を持つモーションがダンスの半分以上を占めていて、注意深く使わないと、強すぎる動作が流れを壊してしまう。
Do-Daiのダンスを活かそうとすると、意味をそのまま利用するか、意味を持たない状況を作り出す以外の方法は、まずないだろう。
この動画は、動作が特別な意味を持たない状況を作り出している。曲自体が物語を持たないインストであり、Do-Daiのダンスが持つ意味と競合しない。
だが、単に食い合わないだけでは、面白い動画にはなり得ないだろう。
この曲では、各パートが順に主役を交代しながら展開しているため、曲全体を通して、主役となっているパートに取っては見せ場となる。
Do-Daiのダンスは、モーションに特徴が強いため、モーションに意識を向けさせる効果が強い。曲の主張が弱いと、ダンスが曲を圧倒してしまうが、常に見せ場が続くような曲と組み合わせることで、強い動作と強い曲がうまくバランスして、印象的な表現を構成しているのだ。
そして、イントロの静かな場面では、ロングを使って引いてみせることで、その後の展開への備えを作り、ラストの、リズムセクションが主役となり、それまでの曲のリズムとは違う流れになるところでは、リズムを持たないアピールのラッシュで構成することで、曲のリズム変化にあった映像変化を見せている。最後の最後でダンスに戻るところでは、わずかにドラムセクションの密度が下がり、beatを拾うことができるようになった部分に合わせることで、曲の終わりとダンスの終わりをマッチさせている。
決して広く評価される動画ではないと思うが、奇跡的な傑作であることは疑いない。